姿勢と健康8か条

1.姿勢の正体は「体力」だった

いきなりですが質問です。なぜ、姿勢はなかなか身に付かないと思いますか?
それは「大変だから」です。
では、なぜ大変なのでしょうか?
それは、筋力とバランス感覚が必要だからです。この、自分の体をまっすぐに保つ筋力とバランス感覚の事を姿勢体力と呼びます。
つまり、いわゆる姿勢のいい人は、姿勢体力が備わっている人なのです。

2.姿勢体力が身に付けば「良い姿勢」「悪い姿勢」はない

あなたは自転車に乗れますか?乗れない人には申し訳ないですが、乗れるという前提で聞いてください。
自転車に乗れるからといって、起きている間中自転車に乗っているわけではありません。必要に応じて自転車という道具を使いますよね。
姿勢も全く同じです。姿勢を保てる能力が備わった体(姿勢体力が備わった体)を手に入れることが出来たら、必要に応じて姿勢を使いこなせばいいのです。
つまり、姿勢体力が備わった人にとって、見た目の「良い姿勢」「悪い姿勢」はなくなるのです。

3.姿勢にはオンとオフがあり、使い分けが大事

いわゆる良い姿勢は、バランス感覚のスイッチをオンにした状態で、仕事や勉強をするなど、物事に向き合う時の姿勢です。それに対して、いわゆる悪い姿勢はバランス感覚のスイッチをオフにした状態で、休む時の姿勢です。姿勢体力が備われば、必要に応じてオンとオフを使い分ければ良いのです。
先ほど書いたように、姿勢体力が身に付いた人には、良い姿勢、悪い姿勢はなく、オンの姿勢(自転車に乗っている時)、オフの姿勢(自転車に乗っていない時)があるだけです。

4.座り姿勢の見直しが姿勢体力を備える最短距離

人は、立っている時に比べて、圧倒的に座っている時の方が、背中が丸まりやすくなります。
その結果、座っている時に自分の骨盤と背骨をまっすぐに立てて座れるようになることが、姿勢改善の最短距離なのです。

5.椅子の正しい座り方「椅子の正座=基本姿勢」

椅子の正しい座り方を椅子の正座、別名基本姿勢と呼びます。
基本姿勢のまま余裕で30分座っていられるようになることが、姿勢体力が備わった証となります。

6.基本姿勢で座ること自体がエクササイズ(健康法)

基本姿勢を維持するには、腹筋、背筋、腸腰筋といった一生に渡って役に立つ筋肉を鍛えることになります。
Y字バランスをするように、静的な運動になっているのです。
その観点からも、姿勢はウォーキングやヨガと同じように、健康法の一つとなるのです。

7.姿勢体力を自分のために役立てる

姿勢は躾や教育のために「とらされるもの」ではなく、自分の心と体の健康のために役立てるべきツール、体の使い方です。姿勢体力を備えることで、肩こり腰痛予防だけでなく様々な恩恵を手にすることが出来ます。姿勢を味方につけて、人生に追い風を吹かせてください。

8.枕の高さやカバンの持ち方などは脇役

残念ながら、枕の高さやカバンの持ち方を変えるだけで姿勢が良くなることはありません。大切なことは姿勢体力を備えることであって、枕の高さやカバンの持ち方などは、姿勢改善を妨げないための脇役でしかないのです。

理想的な座り姿勢

理想的な姿勢とはどのような状態なのでしょうか。

生活のなかでとる姿勢には、立っている状態と椅子などに座っている座り姿勢があります。
まずは、どのような立ち方が理想的なのでしょうか?

側面から見たとき、
・耳の穴
・肩の中央
・大転子(だいてんし・もも付け根外側の骨)
・膝関節のやや前方
・足のくるぶし
が直線状に並ぶ立ち方が理想です。

次に、理想的な座り姿勢はどうでしょう。

同じように横から見てみると、
・耳の穴
・肩の中央
・大転子(だいてんし・もも付け根外側の骨)
が直線状に並ぶ座り姿勢が理想です。

立っている状態にくらべ座り姿勢ではハムストリング(ももの裏の筋肉)が緊張するのですが、この筋肉の緊張が強いと骨盤が後ろへ傾く原因になります。この骨盤が後ろへ傾いている状態を「後傾(こうけい)」と呼び、人体の構造上、意識せず座ると「後傾」してしまいます。
立っているとき同様、座り姿勢でも、理想的な姿勢を維持するにはポイントとなる部位が一直線上に並んでいる必要があります。そのため座り姿勢では骨盤を立てる必要があるのですが、先にもご説明したように人体の構造上座り姿勢では骨盤が後傾しがちです。これを理想的な座り姿勢に変えるには、ハムストリングが骨盤を引っ張って後傾をおこす力に負けないよう脊柱起立筋・腹筋・腸腰筋を働かせる必要があるのです。そのため、理想的な座り姿勢は、理想的な立ち姿勢を維持するよりも難しいのです。

このように理想的な座り姿勢で生活するには、骨盤を立てておくための筋肉を鍛える必要があるといえるのです。

悪い座り姿勢の弊害

悪い座り姿勢での生活が続くことによる弊害には、一体どのようなものがあるのでしょうか。

たとえば大転子を前に出して座る姿勢、つまり椅子に浅く腰かけて背もたれに寄りかかっている状態では骨盤が後傾してしまうだけでなく、背中が丸まってしまいます。この状態だと、理想的な座り姿勢を維持するのに必要な筋肉を、十分活用させることができません。

このような悪い座り姿勢が続くと、首や背中・腰にかかる負担が増えることによる頭痛・肩こり・腰痛は言うに及ばず、血液循環が滞ることによる冷え性など日常生活にも悪影響が出るようになります。

また、近年、このような生活習慣が起こす不快、不調などは同様に心や精神状態にも悪影響を及ぼすことが、精神科、心療内科の見地からも唱えられています。慢性的な症状は人のやる気を喪失させる大きな要因の一つで、うつ病の引き金にもなりうるのです。理想的な座りを身につけることは、シンプルながらも心身ともに大きな役割を果たすと言えるでしょう。

更に、この身体の使い方は高齢者が直面する問題の解決策としても注目されつつあります。

先にふれたとおり、骨盤と背骨を立てて座るには筋力とバランス感覚が必要です。
筋力をつけるには適度な運動習慣を身に着けることが望ましく、継続可能にするためには手軽かつ安全であることが求められます。理想的な座り姿勢を維持するには脊柱起立筋・腹筋・腸腰筋を働かせるため、これも一種の筋力トレーニングとしてとらえることができます。最初は自転車に乗れなくても、練習を繰り返していくうち乗れるようになるのと同様、最初は理想的な座り姿勢ができなくてもトレーニングを毎日繰り返し行うことで、やがて理想的な座り姿勢をとれるようになるのです。

自分でトレーニングを繰り返すことで身に付けられればいいのですが、つい忘れてしまったり、どうしても続かない方はZAGOO(ザグー)という便利な姿勢補助具があります。
ZAGOOは、背骨の土台である骨盤を立てざるを得ない構造になっているので、骨盤を立てて座るという「型」を体に憶えさせる上でとても効果的です。

骨盤を立てて座る「型」を覚えたら、ZAGOOがない所でも姿勢が保てる体力作りに挑戦してください。
そうやって身に付く姿勢体力が、様々な恩恵をもたらしてくれるのです。

良い姿勢が健康寿命を伸ばす可能性

寝たきりなどによる筋力の低下が生じることを「サルコペニア(筋力減少)」と呼び、「虚弱」や「ロコモティブシンドローム」と同じように、健康長寿の妨げとなっています。

姿勢の維持が高齢者の健康にどの程度影響を与えるのか、千葉県にある特別養護老人ホームと熊本県の病院で、ZAGOOを使って姿勢を保持する実験を行いました。 その結果、明らかにむせ(誤嚥)の回数が減ったという結果が出ました。これは、毎年数万人の方が亡くなる誤嚥性肺炎の防止につながることが期待されます。

加齢による身体的な衰えを完全に防ぐことはできません。しかし、日頃の取り組みにより進行を遅くすることは可能です。姿勢維持ができる体力によって身体能力低下を遅くすることができるようになれば、家族やヘルパーの負担軽減にもつながりますし、患者自身の健康寿命を延ばすこともできるのです。

日本は世界でも有数の長寿国です。QOL(生活の質)の観点からも、健康寿命は注目を集めている分野といえるでしょう。不調の解消だけでなく、健康寿命を延ばすための取り組みとして、姿勢づくりは今後ますます注目を集めることが予想されます。

日本人の平均座り時間は7時間で、世界一座っている時間が長い国民であるという調査結果があります。